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タツキは?とコウヤに聞かれたのでさっき運転手が言っていた事を伝えた。
「あぁ、何かが急に現れてこうなったと先頭の運転手が言ってたけどそういう事か。どうやら原因を探った所で答えなんて今は出そうに無いね」
「ウチら帰れるかな、家に.......」
美奈子の質問に僕とコウヤは黙り込んでしまった。
分かってる。
美奈子自身もこの状況が明らかに現実離れしていて帰れる保証なんて無く、むしろ帰れない可能性が有ることにすら気付いている。
だからこそ僕ら二人に励ましにも似た言葉をかけられることを望んでいることくらい分かってる。
が、僕とコウヤはそれに対して大丈夫だよ、とは言えなかった。
「ハハッ、実は僕ら天国に向かってるのかもね」
「タツキにしては笑えない冗談だね」
「たっちゃん最低」
しまった、少々冗談が過ぎてしまったようだ。
反省反省。
すると車内のアナウンスでもうすぐ例の光に突っ込むらしく、とりあえず衝撃に耐えられるように備えとけって指示が出た。
僕ら三人は指示に従いそれぞれ鉄の棒に捕まり衝撃に備えることにした。
「どうなると思う?」
僕はコウヤに何気なく聞いた。
「分からない。ただ、理解出来ない事が現在進行形で起きているのだから、"分からないこと"が起きるのは間違いなさそうだね」
なるほど、少なくとも常識に当てはまらないような出来事が起こるということか。
そうすると色々と気構えが変わってくるな。
「美奈子は大丈夫か?」
「む、無理........胃が痛い.............」
無理もないだろう、美奈子はストレスに弱い方なのだから。
でも案外大丈夫そうなのでそっか、とだけ返しといた。
するとシュッ、と音と共に今まで暗かった外が一気に真っ白になった。
衝撃も無く取り敢えず平気かな、と思っていたらアナウンスが急に流れて運転手の慌てた声が車内に響いた。
『み、皆さん!しっかり何かに掴まっていてください!!』
その直後
色々な音が車内に響き渡った。
何かに電車がぶつかる音。
窓ガラスが割れる音。
電車のタイヤが地面を抉る音。
そして人々の悲鳴。
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