たどり着いたのは見知らぬ土地

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「あ、コウヤ君、気休めかも知れないけどこのハンカチで血を拭いて」 ミナコはポケットからハンカチを取りだしそう言った。 するとコウヤは周りの状況を確認しながらミナコの申し出を断る。 「いや、俺よりもっと重症のヤツに使ってやってくれ」 そう言われてミナコも周りを見渡す。 コウヤが自分のせいで怪我してしまったためあまり周りが見えて無かったのだろう。 その光景を目の当たりにしたミナコは目を見開いていた。 ミナコは分かったと言って木の枝が刺さっていたサラリーマン風の男の元へ駆けて行った。 「それで、本当に大丈夫なのかよ?」 「まぁ、頭は軽い切り傷だから平気だよ。でも肩から落ちたから少し痛めちゃったね」 「それって骨折か?」 「いや、一応動くから脱臼とかだね。まったく、我ながら幸運な奴だと思うよ」 まぁ、それもそうだろう。 人間一人を空中でキャチして肩からダイブしたら普通は骨折する。 「日頃のトレーニングのお陰だな」 「そうだね、新体操やってた自分に感謝だ」 そう言って清々しい笑顔を見せる。 「イケメンめ、爆発してしまえ」 「ん、イケメン?それって誰のこと?」 「おいこら、しらばっくれるな」 「ハハッ、コウヤは手厳しいね」 「まったく」 僕はやれやれという風にため息を吐く。 「タツキ、この事はミナコちゃんに内緒だよ」 ミナコにこの事が伝わればアイツはまたコウヤに頭を下げるだろう。 「分かってるよ」 そう言って俺とコウヤは動けない人達の手助けをするため一旦別れた。 しばらくして僕たちの車両内の人達の手当てを終えた僕らは取り敢えず先頭車両に向かう事にした。 あ、ちなみにミナコは医大志望だからこの歳にして多少の医療知識がある。 というのも我が家の父が医者だからというのも大きく関わっている。 小さな頃から父に憧れていたミナコは家に有る医学書をよく読み漁っていた。 そんなの読んでいて面白いの?と一回聞いたことが有ったが、本人いわく下手な少女漫画より面白いらしい。 僕からしたら理解に苦しむ回答だった。 想像してほしい。 可愛い女の子がベットの上で足をパタパタとさせながら読んでいる本が何かというと分厚い医学書なのである。 もはや違和感しか感じない。 しかも幸せそうな笑みで[へー、そうなんだぁー]とか独り言を言っているときも有るくらいだ。
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