第1章

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 (お腹、すいたな)    ぐるぐる鳴って、何か餌をよこせと喚く、私の身体。  だけど、何か作るのも面倒くさい。  気晴らしにと、テレビをつけた。  気がまぎれれば、お腹が減っていることも気にならなくなるかもしれない。  バラエティ番組が、不倫をテーマに激論を繰り広げていた。  最近、不倫を描いたドラマも放送されていたというし、芸能人の不倫がニュースになったばかりだ。その影響もあるのだろう。 (こんな堂々とやるもんなんだ……)  恋愛は自由だ、世間体がどうだ、不実だ、禁断だから燃えるんだ――と、使い古されたような言葉ばかりがぽんぽん出てくる。  全体としては、「不倫は良くない」という方針のようだ。 (不倫は良い事! なんて打ち出す番組もどうかと思うしね……)  テレビの番組表を見てみても、さして目を引くタイトルもない。  CMに切り替わったタイミングで、私は友だちからもらったお土産のことを思い出した。  アイドルグループのコンサートで北海道に行った時のお土産らしい。  有名な製菓店のチョコレートだ。  女子力の低い、ごちゃごちゃしたトートバッグの中から、円く薄く固められたチョコレートが五枚入ったパックを取り出す。  一口、口に含めば、仄かな苦さと強烈な甘みが舌にとろけていく。 (さすが、有名なだけある)  CMが終わった。  先ほどの芸能人たちが、また不倫について語り始める。  浮気だの不倫だの、世間の人々はよくもまあ、こんな話題で盛り上がれるものだ。 「外食とか、飲みとか多いな~って思ってたら、会ってたんですよぉ!」  芸能人の一人の声が、耳に刺さった。  ――外食とか、飲みとか多いな~って思ってたら  いや、いやいやいや。  ふいに浮かんでしまった想像をかき消す。  彼に限ってそんなことはないはずだ。 「彼だけはそんなことないって思ってたのに!」  やめてください、芸能人サマ。
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