第1章

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 そもそも、外食相手は私の友達である。  今日だって、用事のついでにご飯に行こうという流れになったはずだ。そう聞いている。  ぱきっ、とチョコレートを割るようにかじった。 (邪推はやめよう。彼女はマジメな子だし、そんなことに手は出さない)  口の中で、チョコレートが苦さと共に溶けていく。 (だけど、それにしては随分と外食が多くないか? 少なくとも、他の人より――)  こくりと甘さを飲みこんだ。 (まさか、浮気、してるとか――)  疑念を振り払うように、二枚目の包装を破る。 (私が誰かとご飯行くかもっていうのは、嫌がるくせに)  束縛が強いのか、嫉妬をするタイプなのか、私がそういうことには淡白なだけなのだろうか?  喉の奥に流れる甘さを味わいながら、思い出した。  チョコレートが口の中でとろける感触は、キスの数倍心地よいらしい。  もしかしたら、やみつきになっちゃうかもしれない。  自分で思いついた、そんな戯言が、バカらしくて笑ってしまう。  バカな私には、彼を信じて待つしかできない。
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