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名前を言われて、慌てて意識を覚醒させる。
危ない危ない!
もしバレたら拳が飛んでくるかもしれない。
唯衣は学校の制服姿で食堂にやってきた。
洗いたての髪から漂うシャンプーの香りが鼻腔をくすぐった。
「ちゃんと確認してよ。いくら幼馴染って言ったって、限度があるわよ限度が」
「ごめん」
『ほら、文句言わない。脚太いんですから』
「太くないわよっ!」
また、口論を始めた。
「どうして制服なんだ?」
俺は無理やり話題を逸らし、二人の言い合いを中断させる。
「だって、家に入れなかったから、服がないんだもん」
あ~そうか。着る服がないのか。
「なら、俺のジャージ使えよ」
「うん……」
唯衣は膝をこすり合わせて、もじもじしだした。
「あ、あのね……。私、淳一にお願いがあるんだけど……」
こうも恥ずかしそうにされると、こっちまで緊張してしまう。
「な、なんだ?」
まさか、父さんの言ってた男女の揃ってやるやつじゃ……。
唯衣は耳まで真っ赤にして――
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