第二章

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 義光の手勢は金子元宅の手勢とともに瀬戸内海からあふれ出る毛利軍を迎え撃とうと城を出れば、どこから集まったのか新居郡の領民たちが手に得物をもって合流するどころか、義光を差し置いて突っ走ってゆくではないか。  意表を突かれた義光は後方に追いやられて、領民らをかき分けながら毛利軍に向かわねばならぬ羽目になった。  これには同じように元長も驚かされてしまった。 「こやつら、民百姓か!」  その貧しい身なりで鋤や鍬を振りかざし毛利軍に突っ込んでくるのが伊予の武士でなく領民であることはいやでもわかり、意表を突かれてしまった。  人をやって調べたところ相手の兵数は少ないというのはわかっていたが。まるで地より涌(わ)き出て石鎚山から吹き下ろす突風の如く毛利軍に立ち向かう領民らの数を合わせれば、同数になるのではないか。  このことは、予想もしなかったことである。 「よせ、命を粗末にするな!」  武士としての自覚の強い元長は民百姓を討つことをよしとしなかったが、容赦なく襲い掛かってこられて、討たざるをえなかった。  しかし討っても討ってもきりがなく。それどころか毛利軍が押されて、味方の武士が次々と討たれてゆく。 「なぜだ、お前たちは土佐を恨んでいるのではないのか!」  元長は叫んだ。が、それは領民たちの耳に届かなかった。
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