第四章

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 言うや使者はそそくさと立ち上がって、城から出て行った。あとに残された義光ら和田の郎党に元宅ら金子郎党は広間で対峙する。  その間に元宅は立って周りを見回す。 「無理をすることはない。逃げたい者は逃げよ。死ぬのはわしひとりでよかろう」  援軍の望みが絶たれて、圧倒的な兵力さで勝てる見込みは万に一つもない。戦意の喪失は免れなかった。それを元宅はそれを見抜いたうえで、そう言った。  元春ら金子郎党はいたたまれない気持ちで元宅を見つめていた。 「それにな」 「兄者……」 「領民まで巻き添えにするのは、心苦しい。わしひとり隆景殿の面前にて腹を斬ろう」 「兄者、なにを言う」 「いや、ただ腹を斬るだけではつまらぬな。介錯は隆景殿にしてもらおう」 「兄者!」  元春は元宅に勢いよくつめよる。 「兄者にその覚悟があるなら、わしも共をするぞ!」  そう言うや、金子郎党らもそれに続けとばかりに、 「お供」 「お供」 「お供」  と口々に叫び。義光や和田の郎党を唖然とさせた。
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