第一章

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 翌朝、甲冑で身をかため、谷を見下ろす山上の和田城より義光は郎党らと谷間の集落へと下りれば。二百名からの武士たちがあつまり。義光を待ちわびていた。 「待たせたな」  馬上、甲冑姿も勇ましく、義光は武士たちを見回す。 「では、ゆくぞ!」  威勢よく右手を挙げて叫べば、武士たちも、 「おおー!」  と勢いよくもろ手を挙げてこたえ。いざ、伊予へと駒を進めた。  留守の女子供たちは陽気に手を振り、この義光率いる和田郷の軍勢を見送っていた。その中には昨日吉野川でたわむれあった女たちもおり。義光に対してひときわ目を輝かせて、 「ご武運をお祈りいたしておりまする」  と大きく手を振り。  義光も明るく手を振りかえした。  この集落の誰もが、万に一つも負けるなどと思っていなかった。いつものように、持ち前の気合と根性で敵を蹴散らすと、信じて疑わなかった。
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