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へんなひとだった、と思いながら、二階への階段を上がっていく。
学校では珍しい木造の階段は、踏みつける度にキィと木が軋む音がした。
運動部の男の子が力一杯ジャンプしたら木が割れそうだ。
階段を上がりきると、猫背になって座り、机に向かっている狐塚の頭のてっぺんが見えた。
無造作なのか何なのか、黒い髪の毛がクシュクシュしている。
「狐塚先生、それ、パーマなんですか、癖毛なんですか」
狐塚は少しだけ驚いたように顔を上げ、「パーマだよ。かけたの二ヶ月前だから大分取れてるし、元々、若干の癖っ毛なのもあるけど」と答えた。
漢字とか難しいカタカナの多そうな、賢そうな喋り方をする人だなと思いながら、「へえ、そうなんですか」と言う。
「私、日誌を届けに来たんです。今日の日直だったから」
「ああ。美術室までわざわざごめんね」
「いえ」と言いながら、椅子に座っている狐塚の手に日誌を渡した。
皆が黒板を消した後のチョークの粉がついているのか、日誌の表紙の黒い布は所々が白く霞んでいる。
空っぽになった指に粉っぽさを感じて、私は指先を擦り合わせる。
「ありがとう。君は名前は?」と言いながら、狐塚は日誌を開いた。
「宮城利香」
「そう、宮城さんか。へえ、今時の女子高生って皆、こんな丸っこい字を書くんだ」
男にしては長くて綺麗な指がペラペラとページを捲っていく。
それがやがて、今日の私のページでぴっと止まる。
「でも、君は綺麗な字を書くんだね」
狐塚は日誌に目線を落としたまま言い、微妙な褒め方をされた私は「どうも」と応えた。
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