220人が本棚に入れています
本棚に追加
/118ページ
賢一さんは私の肩を掴んで、優しい目を釣り上げ睨んだ。
『自分勝手もいいところだ!!
きみがその子のために死んだって、きみの独りよがりでしかないだろ!?
生きてれば、この先その子に償えるかもしれないだろ!!!!
簡単に死ぬなんかいうな!!!!
きみの命はきみだけのモノじゃない!!!!』
“━━━━━━君を愛しているんだ”
涙がこぼれた。
『ごめんなさい』と『ありがとう』がこぼれた。
生きろと言ってくれた。
叱ってくれた。
こんなどうしようもない私に、愛を叫んでくれた。
嬉しかった。
申し訳なかった。
辛かった。
幸せだった。
苦しかった。
でも、何より。
『真夫が、いるから。』
あの子の幸せを壊した私が、幸せになっていい筈がない。
そうして彼を拒んだ。
『きみは俺を拒めないよ』
彼は目をそらさずに真っ直ぐ言った。
『きみの辛さもわかった。
罪もわかった。痛さもわかった。
けど、それは俺に非があってのことじゃあないだろう??
俺を拒むなら、俺に理由がないと。
美代子さん。
真夫くんにしてしまったこと。
確かに咎められるべきことだと思う。
けれどこのままだったら、彼に傷を残すだけだ。
誰も救われない。
きみは、たった一人の息子をこのまま手放しておくの??
彼がきみを憎んでいたとしても、その情をきみは受け入れるべきなんじゃないのか??』
美代子さん。
これからは俺と生きて。
それで健全になって、一緒に真夫くんを迎えに行こう。
ああ、そうか。
死んで楽になろうとしていたんだ、私は。
どんなに心の中で謝罪しても、それは真夫には届かない。
生きなきゃ。
これからも。
この人となら、きっと。
歪んでいない、純粋な愛を育める。
真夫も私も汚れも罪も受け入れてくれた、この人なら。
最初のコメントを投稿しよう!