聖母の懺悔

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賢一さんは私の肩を掴んで、優しい目を釣り上げ睨んだ。 『自分勝手もいいところだ!! きみがその子のために死んだって、きみの独りよがりでしかないだろ!? 生きてれば、この先その子に償えるかもしれないだろ!!!! 簡単に死ぬなんかいうな!!!! きみの命はきみだけのモノじゃない!!!!』 “━━━━━━君を愛しているんだ” 涙がこぼれた。 『ごめんなさい』と『ありがとう』がこぼれた。 生きろと言ってくれた。 叱ってくれた。 こんなどうしようもない私に、愛を叫んでくれた。 嬉しかった。 申し訳なかった。 辛かった。 幸せだった。 苦しかった。 でも、何より。 『真夫が、いるから。』 あの子の幸せを壊した私が、幸せになっていい筈がない。 そうして彼を拒んだ。 『きみは俺を拒めないよ』 彼は目をそらさずに真っ直ぐ言った。 『きみの辛さもわかった。 罪もわかった。痛さもわかった。 けど、それは俺に非があってのことじゃあないだろう?? 俺を拒むなら、俺に理由がないと。 美代子さん。 真夫くんにしてしまったこと。 確かに咎められるべきことだと思う。 けれどこのままだったら、彼に傷を残すだけだ。 誰も救われない。 きみは、たった一人の息子をこのまま手放しておくの?? 彼がきみを憎んでいたとしても、その情をきみは受け入れるべきなんじゃないのか??』 美代子さん。 これからは俺と生きて。 それで健全になって、一緒に真夫くんを迎えに行こう。 ああ、そうか。 死んで楽になろうとしていたんだ、私は。 どんなに心の中で謝罪しても、それは真夫には届かない。 生きなきゃ。 これからも。 この人となら、きっと。 歪んでいない、純粋な愛を育める。 真夫も私も汚れも罪も受け入れてくれた、この人なら。
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