聖母の懺悔

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そうして、彼と結婚した。 愛梨を授かった。 それまでにも何度も千葉の父の家を訪ねた。 賢一さんも一緒になって、必死に真夫に会わせてくれるよう頼んでくれた。 それでも玄関の門が開かれることはなかった。 あるとき、父から電話がきた。 『美代子。 わしはな、いまだにお前の罪は許されるものではないと思っている。 けどな。真夫がな。 わしら大人に、笑うんだ。 いい子を努めようと、一生懸命笑うんだ。 もっと頼ってもいいのに、迷惑かけまいと必死に自分を押さえつけるんだ。 母さんもわしも、それが辛くてかなわん。 あの子にな、愛が浸透しきれないんだ。』 今の真夫の保護者はわしらだ。 わしはお前には真夫を会わせない。 だから、待ってなさい。 真夫が二十歳になるまで。 そうすれば、真夫は一大人になる。 これからのことも、お前のことも、あの子自身が決めるさ。 私は何度もありがとうございますと頭を下げた。 その時すでに、真夫と離れて7年が過ぎていた。 会いたい。 真夫に会いたい。 謝りたい。 抱きしめたい。 真夫のワガママを聞きたい。 買い物に一緒に行きたい。 話をしたい。 愛梨に会わせたい。 それから、それから。 毎日 我が子のことを想って 生きてきた その 真夫の鍵が 今 目の前に━━━━━━
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