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マナミは熱のせいで、布団に張り付いていた。
エアコンからは温風が流れてくるものの、一向に身体は温まらない。
「マナミ、熱は?」
ノックもせずに入ってくる。執事のユウラは、二人きりになるとマナミを御嬢様とは呼ばない。
マナミは毛布に潜る。
自分より三つ歳上のユウラが苦手だった。
「マナミ。お薬まだ飲んでいないのですね」
ベッドの傍らまで来たユウラの気配をマナミは寝た振りをして遣り過ごす。
「飲まないと治るものも治りませんよ?」
それでも引き下がらないユウラがマナミには窮屈だった。
「寝ていれば治る」
駄々を捏ねてはみたがユウラは佇んでいる。薬を飲むまでそこに居るつもりなのだ。マナミはユウラに背を向けた。
「治りませんよ」
次の言葉は耳元だ。柔らかい声が囁いた。
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