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「治る……っ」
反論して振り返ったマナミの額にユウラの額がこつんと当たる。
「熱、少しありますね」
ユウラが付けている香水の香りが、強まった。
「飲まないなら無理矢理飲ませますよ?」
ふいに離れたユウラが脅して来る。
ユウラを怒らせない内に呑んだ方が身のためかと何時もマナミは思うのだが、素直に言うことを聞く気にはなれなかった。
特に具合の悪い日は、動くことすら困難だ。
そのことをユウラが知らない分けがない。
知っていて意地悪をしていることをマナミも気がついてはいる。ただ、それがなにか分からなかった。
「では、決行ですか?」
「んぐ……」
力任せに掴まれて、反論する口を塞がれる。舌で押し込まれてくる錠剤を戻す術をマナミは知らない。呑み込むしかなかった。
何時もそうして負ける。
錠剤を呑み込んだあとも離れることのないユウラの深く長い口付けに、マナミの熱は治まるどころか上昇する。
「……っ、う」
「マナミ、僕にだけチョコがないのは嫌がらせですか?」
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