苦くて、甘い。－桜・健人編－

1杯目

29歳なんて、とっくに結婚して子どもが出来て家庭を持っていると思っていた。

だというのに、実際はどうだろう。

日中は仕事して、実家暮らしだから家事なんてほとんどせず。

休みは結婚してしまった友人たちに声をかけるなんてことは出来ず、ボーッと家で過ごすか買い物に行くか。

恋人はいないし、出来る予定も、作る予定もない。

そんなあたしに大輔はピッタリだった。

お互いフリーで、誰とも付き合う気はなし。

でも時々誰かと肌を合わせたくなる時がある。

そういう時にあたしの欲求を満たしてくれる人をずっと探していて、大輔はあたしが求める条件をすべて揃えていた。