1杯目

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『わかった……。でも忘れないで。それでも俺は、桜さんが好きだから』 精悍な顔を苦しそうに歪めて微笑んだ健人くんの顔と言葉が、今でも忘れられない。 同じように告白したことがある立場からすれば、健人くんは辛くて仕方なかったと思う。 でもその時のあたしには、健人くんは年下の、弟みたいな男の子という印象しかなかったのだ。 それに、あの時のあたしには、柾紀しか必要なかった。 でも健人くんは、気付いていたんだろう。 柾紀の気持ちがあたしから離れている、と――……。 【あの時】 【もう少し周りを冷静に見れていたら】 【あたしは今、幸せだったかな】
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