かつての恋人たちの溝

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  忙しい中、“Raison d'etre”のことで 集まった方々を、 あたしの迂闊さで 引き止めるわけにはいかなかった。 ……代理店の担当であるあたしにも、 絶対話は振られたはずなのに。 自分がなんて返答したかさえ 覚えてない。 なんてこった。 玄関ロビーの外まで 各所のみなさまを送り出してから、 フラフラと会議室へ戻ってきた。 「やれやれですね。お疲れ様でした」 珍しく解放感を声にも出しながら、 九鬼さんがにこやかに あたしのそばに来る。 .
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