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◇
「今度は、違う人が来たのね」
まったく、諦めの悪い人たちだこと。
デレラは、大げさにため息をつく。
女性に、こんなリアクションを取られたことのないレオンバルトは、その態度が勘に触った。
「なぜ、私が城の人間だとおわかりに?」
豪奢なマントも、剣も、身に付けてはいない。
わざわざ髪まで黒く染めて訪ねてきたのに。
「私、一度あった人は忘れないの。
変装するなら、その瞳を何とかしないと。
王族の一員だって、宣伝してるのと同じよ」
そう言って、スミレの花を摘んだ。
「かの色は宝玉
昼には花となり
夜には星となる
アメジストの煌めきは、
我を捉えて離さない」
歌い終わると、花を差し出す。
「はい、レオンバルトさま。王子のお守りも大変ですね」
クスクス笑って、くるりと回る。
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