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「イヤよ」
家来たちは、聞き間違えたかと思った。
下げていた頭をあげて、女を見つめる。
「王子がお待ちしております。急ぎお支度をして、我らと共に城に参りましょう」
「イヤって聞こえなかったの?」
嫌悪感を隠しもせず、堂々と家来に言い返す。
「あのね、私は暇じゃないの。稽古もしなきゃいけないし、家事だってたまってる。城に遊びにいってる暇はないの!」
断られるとは思ってもいなかった家来たちは、一瞬ポカンとし、それでも訓練のたまものか、表情を戻す。
「何か、勘違いなされているようですので、説明するお時間を頂けますか?」
こんな素性の知れない女。
王子の命令でもなければ、引きずってもつれていくのに!
家臣たちの間に、若干の苛立ちが募る。
それは、芸を生業とするデレラには手に取るようにわかった。
自分が見下されていることも。
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