2. レオンバルトの憂鬱

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「イヤよ」 家来たちは、聞き間違えたかと思った。 下げていた頭をあげて、女を見つめる。 「王子がお待ちしております。急ぎお支度をして、我らと共に城に参りましょう」 「イヤって聞こえなかったの?」 嫌悪感を隠しもせず、堂々と家来に言い返す。 「あのね、私は暇じゃないの。稽古もしなきゃいけないし、家事だってたまってる。城に遊びにいってる暇はないの!」 断られるとは思ってもいなかった家来たちは、一瞬ポカンとし、それでも訓練のたまものか、表情を戻す。 「何か、勘違いなされているようですので、説明するお時間を頂けますか?」 こんな素性の知れない女。 王子の命令でもなければ、引きずってもつれていくのに! 家臣たちの間に、若干の苛立ちが募る。 それは、芸を生業とするデレラには手に取るようにわかった。 自分が見下されていることも。
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