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そんな高崎に、あのエイジが、果たしてかなうのだろうか。
そう思うと、ユキミとしては、来てほしいような、来てほしくないような、複雑な心境だった。
と。
「おい」
ドア越しに、高崎とは違う、不機嫌そうな男の声がした。
聞きなれた声なのに、いつものおちゃらけた感じとは、まるで違っていた。
その声に反応するかのように、高崎の声も聞こえる。
どうやら、かなりうろたえている様子だった。
「え、あれ、どうして……」
そこで、ドンという大きな音がしてドアが震えた。
どうやら、どっちかがドアに叩きつけられたらしい。
いてもたってもいられなくて、ユキミはおそるおそる、のぞき窓から外をのぞく。
しかし、どうやら叩きつけられている人物に穴をふさがれているらしく、外の様子は見えなかった。
内容は全く聞き取れないが、ぼそぼそと、低い男の声だけが聞こえる。
ひとしきりその声が続いたあと、ふと、のぞき窓が明るさを取り戻した。
「すみませんでした!」
高崎の叫びが、ユキミの耳を通過する。
そしてそこに見えたのは、初めて会ったときの恰好に似た、スーツ姿にメガネの、エイジの姿だった。
いてもたってもいられなくなり、ユキミは思わず扉を開けた。
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