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「あ、ユキミちゃん、もう大丈……」
開けると同時に、ユキミは、エイジにとびついていた。
エイジの胸で、嗚咽を漏らす。
するとエイジは左手をふわりとユキミの腰に回し、右手はポンポンと、ユキミの頭を撫でた。
「ユキミちゃん、怖かったねぇ。
もう大丈夫、二度と来ないって約束させたから。大丈夫」
そうしてひとしきり泣いて、落ち着くと、ユキミは思わずエイジの胸からいきおいよく離れた。
年甲斐もなく、しかもいつも情けないと感じているエイジの腕の中で大泣きしてしまったことが、冷静になるととても恥ずかしく思えてきたのだった。
「あ、あの、エイジくん、えっと、ごめん……」
「なんで謝るのさ。
あの、よかったら、中に入れてもらえるかな。
ここはちょっと冷えるや」
春はすぐそこといえど、やっぱり夜はまだ肌寒い。
寒そうに肩をすくめるエイジを見て、ユキミは急いで部屋にあげ、暖かいお茶を入れた。
「ありがと、ユキミちゃん」
そう言って、お茶を飲む。
「ほんと、なにもされてなくて良かった。
高崎、あいつまじで許せん。
ぼくのユキミちゃんになにしてくれてるんだ」
そう言って憤慨するエイジを見て、ユキミは、いつもとは違うエイジを感じていた。
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