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「エイジくん、ほんと、ありがとね」
「え、いや、たまたま近くにいたし。
それに、彼氏としては当たり前だし」
彼氏としては当たり前。
その言葉に、妙な罪悪感を覚える。
ユキミは、エイジを腑抜けにして、ユキミがいないとなんにもできないだめな人間にすることが楽しみだった。
しかし、結局はこんな風に助けられ、今そんな彼に、ときめきを覚えている自分がいる。
わたしはエイジくんを、いったい、どうしたいのだろう。
どうなってほしくて、どうしてほしいのだろう。
今まで自分のことしか考えていなかった自分が、途端に恥ずかしくなって、ユキミはエイジを見つめた。
エイジは、「なに?」と、優しく問いかける。
「あのね、エイジくん。
好きな恰好、してもいいんだからね」
「え?なに、突然。
ユキミちゃんの好きな洋服、着るよ?
そもそも、そんなに服持ってないし」
「あと!
そんな優しい口調で話したり、こんな28のいい年した女ことちゃん付けで呼んだり、自分のこと無理やりぼくって言ったり、しなくても、いいんだからね」
「どしたのいきなり。
ていうか無理なんかしてないって……」
「わたし!」
そう言って、またもや涙があふれる。
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