理想のカレの作り方-How to make a foolish boy.-

3/24
前へ
/24ページ
次へ
 しかし、つい先日、そんな日々に、変化が起こった。  今まさに彼女の手を引き、嬉しそうに「どこに行く?何したい?」とはしゃぐ男・エイジに、ユキミが告白されたのは、つい2か月ほど前のことだった。  曰く、彼は24歳。  料理の専門学校を卒業したものの、なぜかそのあと演劇に興味を持ち、定職に就くこともなく、フリーターとして、小劇団で演劇をしているのだという。  そんな彼とユキミがであったのは、ユキミ行きつけの立ち飲み屋だった。  その日仕事で嫌なことがあったユキミは、店主を相手取ってクダをまいていた。  そこにたまたま居合わせ、店主と同じようにユキミの愚痴に耳を傾けていたのが、エイジだったのだ。  彼は、ユキミに熱燗を注いで。 「いや、でも、ユキミさんはがんばってるっすよ!  そーゆー女性、おれは好きだなぁ。  ねぇ、ユキミさん。よかったらもう一軒、行きませんか」  ……なんて、言ったものだから。  つまり、そういうことに、なってしまったのだった。  初対面でのエイジの印象は、ユキミにとって、正直「ダサイ奴」だった。  そのときの彼は、バイトの面接帰りだったらしく黒のスーツを着込み、もっさもさの髪に、高校時代からかけているという銀縁のでかいメガネ。  曰く、外見に特にこだわりはないのだそうだ。  けれど、そのダサさを、ユキミは妙に気に入ってしまったのだった。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加