なぽりたん物語

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気づいたら踵を返していた。 思いがけず走っていた。 大人になりたくて買ったヒールの靴で、まるで運動会にはじめて参加する子供のように、がむしゃらに走っていた。 泣きながら、しゃくりあげながら、彼の腕を掴みたくて、走った。 と。 ヒールがマンホールの穴にひっかかる。 思いっきりバランスをくずしたわたしは、派手に転んだ。 痛い。ひざには血が滲んでいる。 涙は、いっそう止まる気配をなくした。 とうとうへたりこんだわたしは、周りの目もくれず、幼児のように嗚咽をあげて泣き出した。
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