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「ちょっ、紗希ちゃん、なにしたの!転んだの?」
かすむ視界で声のする方を見る。その声の主は、佐々木ハルタだった。
わたしはさしだされた彼の腕をとった。
そして、そのまましがみつく。
泣きすぎて苦かった。
息ができない。
話そうにも、頭でも、喉でも、言葉が出ない。
ただ彼の腕にしがみついて泣くわたしの頭に、彼は迷いながら、ポンともう一方の手のひらを置いた。
「昔さ、学校行くの嫌って言いながら大泣きしてたおれにさ、いつもこうしてくれたよね」
そう言う彼の手は温かく、優しく、しかしどこか頼もしかった。
彼はわたしをゆっくりと立たせてから店の裏口までわたしを案内してくれた。そして、彼は、ゆっくりと口を開く。
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