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ドアベルが鳴る。
どうやら店に、新しい客が来たようだ。
店長がわたしの前にナポリタンを置いてから、接客に向かった。
佐々木ハルタは、わたしと新しい客を交互に見つめてまごついているところだった。
わたしはとっさに言う。
「あ、あの、あんまし気にしないで、わたしの言ったことなんか。
わたしね、嬉しいんだよ?あのはるくんに、お客として、むしろちやほやされてるの、嬉しい。
そんなに成長したんだなって、なんかね、バカにしてるとか思われるかもだけど、ほんとに思うんだ。
だから、店員さんやって、がんばってるはるくんが見たい。
わたしのことなんて気にしないでよ。ちゃんと、ほら、あの人のとこいって、注文、聞いてきて」
そう言ってわたしはナポリタンを頬張って、新しい客のOLたちの方を指差した。
彼はそれでもまごついていたものの、わたしの「ほら」というダメ押しで、しぶしぶ頷き注文を聞きにいった。
どうやらそのOLたちは常連らしく、佐々木ハルタとの会話は和やかに進む。
わたしはその様子を眺めながら、一人スパゲティを黙々と食べ続けていた。
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