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スパゲティも食べ終わり、3杯目の紅茶を飲み干したころ、わたしは3限があと10分で、始まることに気づいた。
急いで席をたち、店員の彼に、勘定をお願いする。
わたしの事情を聞くと、手慣れた様子でお釣をはじきだしわたしに手渡した。
わたしは美味しかったことを告げ、店を出、せかせかと歩き始める。
正直、ナポリタンの味はわからなかった。
理由ははっきりしている。
わたしは彼の成長を、喜ばしいと思う反面、妬ましく思っていたのだ。
あのころの、強がって知ったかぶりばかりしていたわたしと、泣き虫で内気だった彼。
今や彼はばかみたいに前進していて、わたしはひたすらそこで足踏みしているだけで…。
…ばかみたい。
そう思うと、涙が溢れた。
大きな交差点に差し掛かった頃だった。
道行く親子連れの小さな少年が、わたしの顔を不思議そうに眺める。
それを、母親よりも弟をよく見ていた姉が制した。
わたしたち、むかしはあんなだったのになぁ。
わたしのほうが、むしろ泣き虫じゃない。はるくんに、あんなひどいこと言って困らせて。
そもそも、本当に妬んでいたのは、はるくんの方だったの?
…最低だ、わたし。
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