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まだ夜が明け切らない街を、俺はマウンテンバイクで走り抜ける。
まちこ、まちこ…と呟きながら。
今日は、火曜日。
明日は定休日。
仕事が終わったら、彼女と逢い、一晩中一緒に過ごす約束だった。
俺がその小さな私鉄の駅を使い、通勤するようになったのは、ついひと月前のことだ。
(マウンテンバイクはその為に買った。)
事の発端は…恥ずかしながら『女』
今年45歳の誕生日を迎えた俺は、
(男でもアラフィフなんて言葉、使ってもいいんだろうか?)
半年前、ひょんなことから部下である23歳の吉本真千子(よしもとまちこ)と肉体関係を持ち、すっかり舞い上がってしまった。
久しぶりに出来た愛人。
それも、20代前半の。
自分では気付かないうちに、真千子を依怙贔屓しまくっていたらしい。
(そういえば、彼女には簡単でしかもオイシイ仕事しか廻さなかったかもしれない)
ひと月前、部長に呼ばれ、自宅から片道2時間半ほど掛かる海辺の営業所に異動を命じられた。
まあ、左遷されたのだ。
新しい仕事場は、ツーバイフォーの平屋立て住居。
外観からしてちゃちで仮設住宅といった趣きだ。
玄関を開けると、造り付けの下駄箱があり、靴を脱いでスリッパに履き替えるようになっている。
八畳程のスペースにデスク3台とコピー機が置かれ、かなり狭苦しい。
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