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気を取り直して曲がり角を曲がらずに進もうとした時、右側から強い衝撃が走り地面に倒れる蒼葉。
「ふげっ」
哀れなことに女らしい声は出なかった。
「いたたた。君、大丈夫?」
衝撃の原因であろう少年が尻餅を着いて、蒼葉に呼び掛ける。
蒼葉は上体だけ起こすと、そこにはサラサラの髪に中性的な顔立ちをした少年に一瞬だけ見とれた。
(イケメン死ねよ)
驚くよりも結論に至ったのはもはや反射である。
「えっと、まぁ、大丈夫だよイタッ!」
本心を隠しつつ立ち上がろうとすると左足首に激痛が走り、座り込んでしまう。
「どうしたの?」
「挫いた、かな。あははは」
「あああ、ごめん!僕の所為だよね!」
少年は蒼葉と同じ高校の制服を着ているのを見ると、膝と肩を持ち上げお姫様抱っこをする。
「え?」
唐突なことに脳内をフリーズさせて、少年の行動を止めることは出来なかった。
「学校同じみたいだし、保健室まで連れてくよ!」
「ちょ、待って待って待って!」
しかし、ここは公道。誰に見られるか分かったものではない。
それを気にする蒼葉は少年を制止しようとするが、走り出したことにより少年に捕まらなくてはならなかった。
「タイムタイム!下ろして!足治った!完璧に治った!今なら50m5秒で行ける自信ある!」
蒼葉の発言を聞く耳を持たずに走る少年。学校の校門をくぐると、当然何人もの生徒に見られ、せめてもの抵抗か顔を見られぬよう肩に顔を埋める。
それは成功したのか、殆ど女子が少年に見とれて蒼葉を見なく、隠したおかげで顔を覚えられることもなかった。
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