第1章

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俺は夢を見ることがないから、夢でうなされるというのがどんな感覚なのかよく解らないけど、目覚めは悪いんだろうな、と思う。 乙いわく、夢を見るのは眠りが浅い証拠、らしいから。 そして何より、夢を見続ける限り守は前進することができないから。 「コオウミチルを知ってお前どうすんの?」 合宿の日、守は流さんに『満流を教えてやる』と言われたらしい。 そのために”何か”を探さなければならない。 探すのを手伝え、と、軽い口調で言われた。 「執着、してんの?メグムに。  今まで、告られても即拒否するか、  すぐ手出して相手泣かせるかだったのに」 生まれてこの方、サッカー以外には決して本気にならなかった守。 一流がいつだって一番に敬い、何よりも優先してきた人物。 彼がサッカー以外のことに興味を示すことは、一流に、どんな影響を与えるのだろうか。 俺が眠そうな横顔を覗き込むと、「気持ち悪い」と言って押しのけられた。 「人を最低みたいに言うなよ。  ……別に、執着してるわけじゃねぇ。  あいつがどんな人生送ってきたのか、  ちょっと気になるだけ」 「それを世間一般では【執着】  って言うんじゃねぇの?  それから守は実際最低だよ、  何言ってんだ」 「知らね。そうなの?」 少し驚いたのか、軽く見開かれた目。 鈍いって、恋愛に疎いって、こういうことを言うんだろう。
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