第1章

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『途中で見つかっても、知らねぇぞ』 ニット帽を目深に被らせ、首から顎までをマフラーで覆わせる。 薄着をしていたメグムに貸したお陰で、守はこの冬には厳しい格好となった。 このままでは自分が風邪をひく、と、とりあえず防寒具を取りに自宅を目指す。 『あれ、守が女の子連れてる…  お母さん!守がやっと目醒め―――』 『ふ、ざ、け、ん、な!!  ちゃうわ、あほアキ』 顔を隠せど、スカートをはいている以上彼女を女だと判断するのは容易いこと。 家を出ていこうとする二人とすれ違いに内に入っていく女子中学生が、軽やかなステップで台所へと走った。 やがて奥の方から漏れてくる、きゃぴきゃぴとした空気。 かわいらしい親子だ。 メグムがそう思ってほほ笑むと、守は緩んだ顔を背けて、 『人なつっこすぎんだよ』と照れ臭そうに説明する。
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