第1章

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『ねえ、どこ行くの?』 新しいマフラーを首に巻き、メグムの数歩先を歩く彼の背中に問いかける。 『学校』 愛想なく返す声に、メグムは一瞬ぎくりとした。 『もう夕方だよ?  何しに行くの?  行かなきゃダメなの?』 『サッカーすんの。クラブチームでやってんだ』 休んだらシバかれる。 そう告げて、守が笑う。 『二時間くらいで終わる。  退屈だったら、戻って母さんの手伝い、  八百屋の仕事、しててもいいけど?』 にやっ、とニヒルな笑みを浮かべ、否応なしに進んで行く守。 その後を、メグムは頬を膨らませながらもついていく。 彼は小学校に着くと、冬だというのに防寒装備を外し、アンダーシャツの上にTシャツ一枚、ジャージも羽織らないという軽装でウォーミングアップを始めた。 見ている方が寒くなる薄着。 ちらつく雪をものともしない、サッカーに対する思いが伝わって来る。 守が脱いだ防寒具を更に身につけ、グランドから少し離れた脱靴場の傘立てに腰掛ける。 『どこにも行けるわけないじゃん、バカ…』 空に向かって吐いた言葉を、その意味を、守が知るすべはない。
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