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『ねえ、どこ行くの?』
新しいマフラーを首に巻き、メグムの数歩先を歩く彼の背中に問いかける。
『学校』
愛想なく返す声に、メグムは一瞬ぎくりとした。
『もう夕方だよ?
何しに行くの?
行かなきゃダメなの?』
『サッカーすんの。クラブチームでやってんだ』
休んだらシバかれる。
そう告げて、守が笑う。
『二時間くらいで終わる。
退屈だったら、戻って母さんの手伝い、
八百屋の仕事、しててもいいけど?』
にやっ、とニヒルな笑みを浮かべ、否応なしに進んで行く守。
その後を、メグムは頬を膨らませながらもついていく。
彼は小学校に着くと、冬だというのに防寒装備を外し、アンダーシャツの上にTシャツ一枚、ジャージも羽織らないという軽装でウォーミングアップを始めた。
見ている方が寒くなる薄着。
ちらつく雪をものともしない、サッカーに対する思いが伝わって来る。
守が脱いだ防寒具を更に身につけ、グランドから少し離れた脱靴場の傘立てに腰掛ける。
『どこにも行けるわけないじゃん、バカ…』
空に向かって吐いた言葉を、その意味を、守が知るすべはない。
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