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脱靴上の傘縦に腰をかけて練習をこっそりのぞいていると、校舎の中から見知らぬ男がのそりのそりと出てくる。
どうやら、学校の教師らしかった。
彼は顔の見えない小学生には大して気にもならない様子で通り過ぎて行く。
『さようなら』と適当な挨拶。
今から家路を辿る車の中で聞くつもりなのだろう、昔ながらのラジオが小さく鳴っている
――――…トウキョウトニスム、55サイノダンセイガ…―――
ああ、またこの手のニュースか。
その人は、メグムが思っていたことと同じ内容の独り言を、嘆くように吐いて捨てた。
『おまっ……マジで待ってたのかよ?』
顔を上げると、そこには顔の火照った守の姿。
頬は赤く染まり、まだ息も興奮も落ち着いていない。
メグムはそこにあるタオルを投げ渡し、重ねたマフラーの下側でより温まった方を返した。
『だって、これ返さなきゃだし。
案内してもらいたいし……』
『あー。守くん人待たせてるて、女子!
何々~、俺にもショーカイして!
どこの子?名前は?』
彼女の言葉を遮ったのは、聞き覚えのある懐かしい声。
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