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バスが何台か大介たちを追い越して行ったが、二人は徒歩で家路をたどった。
渚や一流が聞くべき話なのか、大介には
――いや、守自身にすら判らないからだ。
「その時俺がメグムの正体を知ってたら、
一流にとって、また、
違う未来があったんだと思う」
でも、知らなかったから。
苦しそうな守の目に、大介はふと疑問を抱く。
「一流の?」
一流とメグムの関係など、それまで聞いたこともない。
「そういえば、守は昔からやたらと
イツとメグムを遠ざけようとするよな」
そういえばそう、風雲児杯の時の約束からずっと。
一流と渚にメグムを合わせない。
一流と渚にメグムを意識させない。
メグム、イコール、小桜満流だと認識させない。
そこまで思い出して、はっとした。
守は足を止めない。
少し後ろで止まった大介を振り返ることもしなかった。
信号が赤に変わり、ようやく彼は振り向いて目を合わせる。
「妹だかんな。一流の」
吸い込まれるようなまっすぐな瞳と、やけに鮮明に響いた彼の声。
背中に汗が流れる。
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