第1章

20/30
前へ
/247ページ
次へ
六時過ぎでも冬場はすっかり日が落ちている。 辺りは真っ暗だ。 街灯だけが少女にこの街の景色を見せた。 大したものは何もない、何処にでもあるような一地区だが、夜景だけは他地域からも評判がいい。 他に見せるようなものも思いつかず、結局人気スポットらしい場所に連れていくことにする。 都合がいいのは、そこが自宅付近であるということ。 『次からはちゃんと相手を選べよ』 自分の家を通り過ぎ、坂を登って上へ上へと登る。振り向こうとしない背中に、照れという愛情を感じる。 メグムはそれが可笑しくなり、笑いを堪えつつ返事を返す。 『うん。次はもっと  あったかそうな格好してる人に頼むよ。  まもる、見てるだけでも寒い』 『そーゆーことじゃねぇ!  てゆか、仕事はマジメにやれ。  おじさん等めちゃめちゃ困ってたじゃん。  心配してるんじゃねぇの?』 『いーんだよ☆お給料もらってないし!』 『え、まじで?なんで』 『家の手伝いみたいなもんだから。  事務所の社長、オトウサンなんだよね』 『へぇ…じゃ、なおさら  こんな事したらダメじゃんか』
/247ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加