第1章

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『ああ守、やっと帰って来たのか』 やけに落ち着いたトーン。 思考停止していた頭が作動する。 『親父っ…………!』 『親…父………?』 迷う暇などない。道を選ぶ時間など、何処にもない。 少女が蛮声を上げる。 『逃げるよ!』 『でも…』 『死んだらだめ!生きなきゃダメ!!』 今にも殴り掛かりそうな勢い。 手を引く強さに驚き、俺はようやく目を覚ました。 「夢…――か」 また、”あの”夢。 夢にさえ出なければ忘れてしまえそうなのに、週に何度かは同じ夢で過去を思い出す。 ぼうっと顔を上げると、目の前にはなぜか切なそうな目をした大介がいた。 いつも元気なことだけが彼の長所なのに、いったい何があったのか。 「どうした?」 俺が問うと、ふっ、と瞬きをして、彼が笑う。 「こっちのセリフだっつうの。  そんなとこで寝るなよ」 「ん。うたた寝してたわ」 「ずいぶん長いうたた寝だな」 そう言いながら、クラブハウス前のベンチから引っ張り下ろされる。
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