第1章

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コーチと顧問が両方出張で自主練となった部活。 部長も用があったのか、今日の練習は早めに切り上げられた。 さっさと着替えて帰るつもりが、着替えながらうたた寝をしていたらしい。 ざっと2時間くらい。 大介が一流の所在を尋ねる。 「イツならもう帰ったよ。晩飯の買い出し。  『ゴ時からタイムセールだから、   主婦と戦ってくる』  ってダッシュで着替えてた」 「主婦か、あいつは」 可笑しそうに、くしゃ、とした笑顔で笑う。 「俺らん中で家計簿まとめられんの  あいつだけだかんな。渚は?」 いつも大介の1メートルくらい後ろをけらけらと笑いながらついて歩く渚。 バスケ部は一年だけで部活終わりの片づけをするので他の部よりも少し体育館から出てくるのが遅いのはわかるが、大介はいつも渚が終わるのを待ってから戻ってくるのに。 今日はその姿が見えない。 先に着替えに来たのか。 「呼び出し。  次の試合、あいつベンチだから」 「お、やるじゃん」 「俺らに交じるから霞むだけだよ、  あいつは」 「嫌な言い方すんなよ。  俺らがいなきゃあそこまで燃えねぇだろ。  感謝してほしいくらいだ」 俺が言うと、「確かに」と大介はまた笑う。 愛嬌のある泣き黒子が微かに上下した。
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