[1] それぞれの長

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「転入生が来るらしいですよ」 暗い部屋で語りかけるようにつぶやく男。 それを聞いた俺は、ちょうどパソコンに送られてきたメールに添付されていた資料を開いた。 「こんな時期に転入なんて、相当頭がいいんですね」 ふざけたように言う彼の言葉を耳に入れつつ資料に目を通す。 「もしくは・・・」 「裏口」 言葉を止めた彼に続けるようにつぶやけば、やはりな、と言う表情を浮かべ、俺の見ているパソコンに近寄ってきた。 資料を見せるように画面を向ければ、整った彼の顔が、面白いことでも思いついたかのような表情へと変化していった。 「完全に裏口じゃないですか」 彼がそう言うのも当たり前だ。 まず、この学園は国が誇る最高峰の学力を有しており、編入試験に合格するような頭の持ち主はいないと言われてきた。 実際、節目に外部生が来るくらいで、中途半端な時期に転入生が来ることなど今までなかったことなのだ。 そんな編入試験をパスしたとは考えにくい。 ましてや、転入生が今まで通っていた学校は、全国でも1・2位を争うほど偏差値が低いのである。 そして、その転入生の名前が“鴨橋”弥生だということ。 つまり、ここ鴨橋学園の理事長の親族だということだ。 それらの情報から彼が裏口入学だろうということくらい安易に推測できるだろう。
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