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「悠人、お前もわかってるだろ。俺らに将来はない。俺らは、お互い親の会社を継いで何十、何百、何千万もの命を守らなくちゃいけなくなる。そしたら、ただ自分勝手な感情に任せて動くことなんか出来ない。どうせ一緒にはいられなくなるんだ」
説得するように柔らかく、優しく言えば、きっと彼も納得するだろう。
本当のことなんだ。
俺らに未来はない。
今ここで両想いになったところで、後で苦しむのは、悠人……お前自身なんだよ。
ずっと一緒にはいれないんだ。
多分、お前のその気持ちは、本物なのだと思う。
一度別れ、他の誰かを愛しく想った後の告白なのだから。
それなりの覚悟もできていると思う。
でも、もうあの頃の俺とは違うんだ。
お前に告白されて、流されて付き合い始めたあの頃とは。
俺らも大人になったんだ。現実を見なくちゃいけない。
この学園に縛られてるわけにはいかないんだよ。
そんな意味も全てこめて伝える。
俺の心臓は針のようなものでチクチクと刺され、何か固いものでギューっと挟まれたような痛みを感じていた。
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