[3] カウントダウン

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彼は理解したのだろうか。 俺の言葉を聞いて黙り込んでしまった。 一度俯きゆっくりと瞬きをしてそのままドアに向かおうと足を進めたが、後ろから伸びてきた手によってそれは阻止された。 痛いほど強く掴まれる手首。 「翡翠・・・」 さっきから名前ばかり呟く彼。 口下手になったなぁ、と呑気にそんなことを考えていた。 口が達者だったあの頃のお前はどこへ行ったんだよ。 そう笑いすら零れそうだ。 「須賀は・・・、須賀龍音ならいいんですか?」 龍音? なぜ龍音が出てくる。 「私が貴方の秘書ならば、貴方は私の想いを受け入れてくれるのですか?」 秘書・・・。 「須賀は・・・、彼はずっと貴方と一緒にいれるのですね」 「悠人・・・」 俺の返事など求めていないように、まるで、独り言を言っているように言葉を続ける彼。 俺が宥めるように名前を呼べば、掴まれた手を引き寄せられ、後ろから抱きしめられる形になった。 「このまま貴方をどこか遠くへ連れて行ってしまいたい」 耳元で囁かれる悲しげな声に負けそうになる。 彼を、彼の想いを許してしまいそうになる。
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