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【Side 龍音】
仕方なく壇上に上がり挨拶を済ませると、壇から下りるとき、長谷の親衛隊隊長と目があった。
『上手くやれよ』
という意味を込めて笑みを見せれば、緊張した様に唾をのんだ彼。
そう、これからが本題なのだ。
式は刻々と進み、理事長挨拶も終わり、司会が「閉会の言葉」と言おうとした直前、広い体育館内に少し高めの声が響いた。
「待ってください!」
それは紛れもなく、先ほど目があった長谷の親衛隊隊長のもの。
全生徒の視線が彼に向く。
それは生徒会役員や教師、理事長にその秘書までもである。
もちろん私だって彼に目をやる。
ただ、他のものとは違う意味合いで。
「僕たち親衛隊から一つだけ、お話したいことがあります」
凛としたその声に、彼に任せてよかったなと思った。
誰もが固唾をのんで見守る中、口を開いたのは理事長だった。
「親衛隊がこのような場で発言をするのは珍しいね。いったい何があったんだい?言ってみなさい」
マイクを使わなくても響く低くて優しい声。
「ありがとうございます、理事長」
それに対抗するようにボリュームを上げた隊長。
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