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そんな空気もよそに、悠人は俺をさらに抱き寄せる。
「ちょ・・・っ!!!・・・悠人」
俺がそう言ったのが悪かった。
龍音のまとっていた空気が一気に変わった。
「貴方という人は・・・」
-本当に思い通りにならない-
口に出した言葉の後、龍音がそんなことを考えていたなんて俺は知らない。
「とにかくお前は離れろ。穢れる」
「ひどい言われようですね」
俺に対してため息をついてから悠人にそう言った。
悠人も開き直っているのか、それとも自分が優位な立場にいるからか、イライラするわけでもなく冷静にことを運んでいる。
「今更お前と主が縁りを戻せるとでも思っているのか」
その言葉は俺の心にもグサッと刺さった。
まるで俺にも言っているかのような龍音の鋭い視線が俺のそれと絡む。
「2人の気持ちが一緒なら大丈夫なんじゃないかな?」
ね?と俺の顔をのぞくように見た悠人の顔を直視できない。
「残念だったな。それは叶わない」
「どうかな。翡翠は」
「いくら2人が想い合っていてもだ」
不敵な笑みを浮かべた龍音に反論しようとした悠人だったが、あっさりと龍音に遮られる。
その龍音の言葉に、俺と悠人は2人して言葉を失った。
龍音、お前は一体・・・
何が言いたい?
何を考えている?
俺は今のお前がすごく・・・
すごく怖いよ。
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