[3] カウントダウン

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ただのゲームだと思っていた。 最初は、ほんの出来心だった。 このつまらない生活に嫌気がさして、何か刺激がほしかった。 悠人の気持ちが転入生にあると知ったとき、何かが一気に崩れた気がしたんだ。 今までの楽しくて落ち着いたこの生活が崩れるなら、いっそ学園ごと壊してしまえと。 だから龍音に賛同したんだ。 もう後には戻れない。 たくさんの人を巻き込んで、莫大な金を動かした。 それがどういうことなのか、俺はしっかりと理解している。 理解しているから・・・ 「離して」 いまだに俺を抱きしめる彼の腕に軽く俺の手を乗せ、そう促す。 「・・・」 目を合わせれば、離したくないとでも言いたいような、寂しそうな目をしていた。 今そんな顔されたら、俺だってどうしていいかわからなくなる。 これは俺のため、そして悠人のため。 意を決して俺は彼の脇腹を肘で突いた。 痛みに顔をしかめながら崩れ落ちる。 俺はそんな悠人を見ないように生徒会室を後にした。 さよならだ、悠人。 俺のあとからは龍音が付いてきて、静かに扉を閉める。 閉まる瞬間に振り返って見えた部屋の中の悠人は、今まで一度も見たことがない悲しい涙を流していた。
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