[3] カウントダウン

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そのまま夏休みに入ると、俺は社長の引き継ぎで忙しくなった。 会社の社員や重役にはもともと言ってあったらしく、快く迎え入れてくれた。 俺の秘書にはもちろん龍音がついている。 会食に会議、いろいろと仕事はある。 「そうだ、翡翠。お前に婚約者をと思って声をかけておいた娘がいてな。今度食事してきなさい」 急に言い出した父。 俺に見合いをしろって・・・。 俺の斜め後ろにいた龍音も驚いた顔をしている。 「お前もそろそろ嫁を貰った方が良いだろう」 息子のためといって莫大な金を使い豪華な学園を作り上げ、あっさりと社長の座を譲った男だ。 会社より息子の幸せを選ぶただの父親。 そんな父が、俺は嫌いではない、むしろ好きだし、尊敬しているが、だからと言って絶対に言うことを聞くというわけではない。 「結婚はまだ考えていません。学園を出たばかりで、社長の職に就き、社員や重役の信頼を得るまでは、仕事に没頭したくて」 そう言えば、父はそうか、とあっさりと引いた。 そういうさっぱりとしたところも結構好きだ。 本当はいまだに悠人とのことを引きづっているのかもしれない。 ちらりと龍音を盗み見れば、しっかりと目が合ってしまった。 俺がそうすることが分かっていたかのように微笑み頷く彼。 本当に、秘書とはわからないものだ。
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