01.ハジマリ、ハジマリ。

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「――…っ!」 「え…」 手を、振り払われてしまった。 「あ…悪い」 「いや! ごめん、触られるの嫌な人だっているよね… 気をつける」 「違…!」 行き場のなくなった手を、後ろ髪に添える。 どうしよう、嫌われてしまったかも。 手が、声が…震えて、みっともない。 「真耶! 行くわよ」 「…あぁ。 シンも、行こう」 「うん…」 …そっか。 マヤは、あんまり触られたくない人なんだな。 沙彩で慣れてしまっていたから、気をつけないと… 「……クソ、 かっこわりぃ…」 -------- 「…遅くなっちゃったな。 バスも…ない」 講習は一時間ほど前に終わっていたのだが、わからない所を先生に聞いていたら、こんな時間になってしまった。 「マヤと黒田さんは…帰ったよな」 本当は、やっぱりちょっと気まずかったから。 というのもある。 「母さん…は、夜勤だし。 歩いて帰ろう」 「……シン」
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