02.不可解ナ、感情。

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「沙彩? 友達と、遊びに行くって」 「…ふぅん。 じゃあ、今日は俺と帰ろう。 確か、塾もなかっただろ。 あわよくば寄り道しよう」 きゅ、と手を握られて、少しだけ体が強張る。 …どうしてこう、簡単にスキンシップ出来るのかな。 こっちはこんなに意識してるっていうのに… 「…8時には、帰るから」 「! あぁ!!」 …う、わ。 「っは、早く行こう!」 「シン?」 こんな事で、そんな嬉しそうにするなんて思わなかったから。 …どうしよう。 心臓が、バクバクしてる…。 -------- 「シン、タピオカジュースだ。 飲もう。 おごる」 「えぇ? いいよ、自分で買うから…」 「いーから」 止める間もなく、タピオカジュースの移動販売車に走って行ってしまったマヤの背中を、ただ呆然と見つめるしかなくて。 …マヤは、自由だな。 それを羨ましく思う事もあるけど、妬ましく思う事もあるんだ。 不可解な感情。 「シン、お待たせ!」 「…マヤ、何人分買ったの?」 真耶の腕には、5つのタピオカジュース。 2人で飲むにしては多過ぎる。 「シンの好み聞くの忘れてたから、いっぱい買ってみた。 ミルクティーと、ストレートのアイスティーと、抹茶のとチョコのと……」 「…ふ、あははっ!」 …朝の事があったから、ちょっと身構えてたのに。 君は、いつもそうやって簡単に飛び越えていくんだ。 「じゃあ、チョコのがいいな」 「あぁ。 まだたくさんあるからな」 「一本でいーよ…」
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