02.不可解ナ、感情。

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沙彩が離れたいというなら後押しするというのは、嘘だ。 ただの、強がり。 馬鹿らしいって、分かっているけど… 「…シン、泣いてる」 「っ! マヤ…?」 息も出来ないくらい強い力で、抱き締められる。 痛い。 苦しい。 「…お前の事を好きでいてくれる奴がいれば、山岡は要らないのか? だったら、俺でいいだろ」 「マヤ…?」 「俺は、シンだけを好きでいる自信があるよ。 浮気もしない。 …シンを一人になんかさせない。 だから、俺を選んで」 …涙で前が滲んで、何も見えない。 ただ目の前にある温もりに縋る様に、マヤの胸板に顔をうずめる。 「…俺の部屋に行くか?」 耳元で響く、優しい声。 この声に身を委ねたら、どんなに楽なんだろう。 「…マヤの部屋に、いく」 「何もしない自信、ないけど。 キスとか、 …その先とか」 「…いいよ マヤの、好きにして」 一瞬の、沈黙。 まぶたに落とされた、小さな口付け。 「…優しくする。 好きだよ、シン」 ただ『自分を好きでいてくれる人』に寄り添って、 利用していると思われてもおかしくない俺は… ……いつか天罰がくだりますか? next...
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