01.ハジマリ、ハジマリ。

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俺より先に沙彩が答えてしまったので、それ以上何も言えなくなってしまって…。 手持ちぶさたに筆箱を弄っていると、丁度先生が来た。 「集まってるなー。 遅れて悪い悪い。 えーと、ここはK大学、H大学、M大学志望学生な」 プリントが回って来たため、福士くんに渡そうと振り返った時… 不意に、耳打ちをされた。 「あのさ。 橋本くんのこと、シンって呼んでいいかな? 馴れ馴れしかったら止めるけど」 「! ううん! じゃあ、俺は…えーと」 「マヤ、でいーよ」 ……小さく、心臓が跳ねた気がした。 「うん… えっと、じゃあ…マヤ」 「うん、シン」 「こーらー! そこ先生の話ちゃんと聞いてるかー?!」 「!! すす、すみませんっ!」 「サーセン」 …普段の俺は、地味で、大人しくて。 先生に怒られることなんて、ほとんどないのに… 「怒られちゃったな」 「ね、」 それを、ちょっと楽しいと思うなんて。 マヤは、不思議。
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