01.ハジマリ、ハジマリ。

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「……」 「沙彩? どうかした?」 「べつにー……」 -------- 「…慎くん、聞いてる?」 「! あ、なに?沙彩」 「もー!」 説明会も終わり、肉まんを頬張りながら、帰路についていたのだが… どうやら俺は上の空だったようで、沙彩が不機嫌そうに頬を膨らませる。 「だからぁ、福士くんかっこよかったねって! 女子にモテモテなのもわかるなぁ」 「あぁ…そうだね」 普通なら、ここで嫉妬するべきところだったのかもしれないけど… 真実だったから、普通に肯定してしまった。 でも、沙彩には不服だったようで。 「…ヤキモチ、やかないんだ」 「え? 何か言った?」 「ううん、なんでもなーい」 気づいたら、沙彩の家の前。 お互い用事がない時以外は、沙彩の家まで送り届けるのが、俺の日課。 「勉強頑張って、一緒の大学いこーね」 「うん。 じゃあ…おじさんおばさんによろしく」 「……慎くん!」 くい、と、服の袖を引かれる。 振り返ると、沙彩が目を閉じていた。 …おねだりの合図。 「…家の前はだめだって。 おじさん、そろそろ帰ってくるだろ。 見たらびっくりしちゃうよ」
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