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2月初旬の冷たい風は、微かに雨の香りを含んでいた。 渋谷のハチ公前で、身体を震わせていた城野真紀が、右手を挙げた。 「ごめんね。 遅れて……」 小走りに駆けてきた小川ルミが息を弾ませて言った。 「私も今、着いた所よ……」 「本当?」 「そうよ……」 「道玄坂を少し登った右手にある焼き肉店が美味しいよ。 昨日、給料日だったから今日はお腹一杯食べてよね」 「ルミは、また私だけ太らせるのね」 『キャハハ……』 「わかるんすか」 「分かるわよ」 そんな他愛ない会話を2人は交わしながら 道玄坂方面へ歩いてゆく。
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