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課長が戻って来た音でビクリとして顔を上げたら、笑われた。
「ほら、ココア、飲むだろ?」
テーブルの上に置かれたマグカップ。
そっと手で持って、湯気の出てるマグカップを口元に運んだ。
甘くて、美味しいじゃないか。
やけに優しい課長に、甘えるのも悪くない。
いや、名案な気がする。
違和感ありありなのも、課長のせいといえば課長のせいだし。
合意の上だけど。
課長が大阪に行くまで、べったりと甘えてもいいだろうか。
同じように課長が考えたのかどうかは、分からないけれども。
二人でいっしょに買い物に行って、ご飯を作り、テレビを見て、足を小突き合って時々、優しく微笑む課長とキスをした。
ときどき、思いだしたように体のことを聞かれ、大丈夫の1点張りの私の主張を訝しがって、歩き方がおかしいと笑われ、昨夜のことを思いだしては顔が熱くなった。
「土曜の夜までやらないとこーな。血、出てただろ。」
布団に潜り込んだ私をぎゅっと抱きしめて、消えてしまうほど小さな声で話しかけてきた課長に、腕の中で頷いた。
課長の腕の中で眠れるのもあと3回。
目を閉じると、出現する砂時計を打ち消したくて、でも消えてくれなくて課長の心臓の音を聞きながら眠りについた。
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