ステップ10

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明日のお昼には大阪に行く課長。 朝から頭の中にしょっちゅう出現する巨大な砂時計を一生懸命に打ち消す。 楽しいことをしてるとき、一緒に笑ってるとき、そういうときは大丈夫なのに、ふと時計を見てしまったり、ふと我に返った瞬間に襲ってくる砂時計が息苦しい。 忘れていたいのに。 課長とお別れする時間まで、そんな砂時計の存在は忘れて精一杯、今ある時間を楽しみたいのに。 刻一刻と近づく時をどうしても意識してしまいながら課長との時間を過ごした。 時々、課長も真顔になってたりして、私の視線に気が付いて取り繕ったような顔をしているのは私と同じように頭の中に砂時計が存在するのだろうか。 お互いに言わないだけで、同じようなことを考えてしまう瞬間があるのだろうか。 夏休みの間、ずっと一緒にいたから。 離れ難さはそのせいだろうか。 もしも、一緒に過ごす時間をもう少し、減らしていたらこんな気持ちにならなかっただろうか。 でも、会えるのに、一緒にいられるのにそれを敢えてしなかったら後悔したかもしれない。 そう思うと、夏休みの過ごし方は間違っていなかったんだと思う。 課長の自宅に戻って来てからの過ごし方。 相変わらず、テレビを見たりおやつを食べたりいちゃいちゃしたり。 ご飯を作ったり。 それなりにゲラゲラ笑って、それなりにドキドキして、充実した時間を過ごした。 「しまったなー。れんこんのキンピラ、食べたいと思ってたのに作ってもらうの忘れてたな。」 土曜の晩御飯を食べ終えて、一緒に片付けてるときに言われてもどうしようもない。 「大阪に遊びに行ったときに、作ります。台所、あるんですよね?」 「おー。早く遊びに来てくれよ。みゅーに会えたら充電できる。」 「・・・私もですよ。けーごさんに会えたら充電できます。」 「ふっ、バカタレ。風呂、一緒に入るか?」 「遠慮しておきます。」 「ちっ、残念。じゃぁ、俺、先に入ってこよっと。」 一緒に入るには、お風呂場が小さすぎることも、私が一緒に入るって言わないことも分かってるだろうに。
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